甲状腺は頸部(首)の正面、喉頭(のどぼとけ)の下に続く気管を取り巻くように位置します。蝶が羽を広げたような形でサイロキシンという細胞の新陳代謝に関与するホルモンを分泌しています。
甲状腺からは男女に関わらず一定量のホルモンが分泌されていますが、これが過剰になったり不足すると体調が悪くなります。脳の下垂体から出る甲状腺刺激ホルモンが甲状腺ホルモンの分泌を調整しています。
甲状腺がんは「乳頭がん」「濾胞がん」「髄様がん」「未分化がん」の4つのタイプがあり、それぞれのがんで性質が異なります。
乳頭がんは甲状腺癌のうち9割を占めるがんで、女性に多く発生するがんになります。40歳代~50歳代の比較的若い人に多く発生しますが、おとなしい成長の遅いがんで、離れた臓器に転移することはあまりなく、また若い人ほど予後が良好であるという性質があります。乳頭がんのうち90%は性質のおとなしいタイプ(低危険度)なのですが、10%は遠隔転移や浸潤をする悪性度の高い(高危険度)ものもありますがそれほど焦って甲状腺癌の治療をする必要はありません。
リンパ節によく転移をしますが、予後にはほとんど関係しません。50歳未満で遠隔転移が無い低危険度群の甲状腺乳頭がんの場合の予後は10年生存率で95%以上、20年生存率でも90%以上ととても高くほとんど乳頭がんで命を落すという可能性はないと考えられます。
しかし、高危険度群すなわち50歳未満でも肺や骨への遠隔転移がある場合や50歳以上で3cm以上の大きな腫瘍があり、甲状腺外にも浸潤があるような場合には10年生存率は7割程度となります。
とはいっても他のがんに比べれば圧倒的に高い生存率であることは間違いありません。
濾胞がん(ろほうがん)は甲状腺がんのうち5%程度を占めるがんで、やはり40歳~50歳代の女性に多く発生します。性質はおとなしいのですが、一部血流に乗って肺や骨などに遠隔転移をすることがあります。この場合は予後は不良となります。
生存率も遠隔転移が無い場合には乳頭がん同様の良好なものになります。
髄様がんは甲状腺がんの1~2%程度の稀ながんで、他の甲状腺がんとはことなり、カルシトニンというカルシウムの代謝に関わるホルモンを分泌する甲状腺傍濾胞細胞ががん化して起こります。半数近くが遺伝的体質によるもので、その場合には同時に副腎の褐色細胞腫や副甲状腺の過形成などの病気を合併することがあります。悪性度は乳頭がんや濾胞がんと比べると悪くなりますが、未分化がんよりは良いとされています。
他の家族(両親、子供、孫、兄弟姉妹、姪や甥、おじ、おば)などに同様の患者がいる場合には、あらかじめ遺伝子検査をして、以上が発見された場合にはあらかじめ甲状腺の摘出を行うことでがんになる確率を抑えることができます。